春の訪れを知らせるつくし、田んぼの畔や河川敷などで群生しているのを目にします。
卵とじや天ぷらなどで食べられ、ほのかに感じる苦みがクセになる食材です。
買わなくても手に入ることから、一度に食べる量ではないほど多くのつくしを持った人もちらほら見かけます。
毒があると言われていますが、たくさん採ったつくしは食べ過ぎても副作用は起きないものなのでしょうか。
つくしを食べていいものなのかの判断にも困ってしまいます。
そこで今回は『つくしの食べ過ぎで副作用は起きるの?毒があるってほんと?』をテーマに紹介します。
つくしの食べ過ぎで副作用は起きる?
お浸しや卵とじなどにされるとついたくさん食べてしまいがちですが、食べ過ぎによる副作用はあるのでしょうか。
アノイリナーゼの作用
つくしには「アノイリナーゼ」というビタミンB1分解酵素が含まれています。
つくしと同じくシダ植物に分類されるワラビやゼンマイ、コイやフナなどの淡水魚、貝類にもアノイリナーゼが含まれています。
ビタミンB1の働きとして、糖質からエネルギーの産出、皮膚や粘膜の健康維持、脳の働きを正常に保つなどがあげられ、不足は脚気という病気にかかるということでも有名です。
このような働きをしているビタミンB1ですが、食べ過ぎによるアノイリナーゼによって分解されてしまうと体にさまざまな不調が現れます。
ビタミンB1の不足は糖質の代謝が正常に行われなくなるためエネルギー不足や食欲不振、疲れやすい・だるいなどの症状が現れることがあります。
また、ビタミンB1の不足によるエネルギー不足はブドウ糖によって働く脳神経系にも障害を起こすことがあります。
更に重症化すると末梢神経に障害を受けて見られる、浮腫みや痺れ、痛み、言葉が出づらいなどの脚気、中枢神経に障害を受けると眼球運動障害、歩行障害、意識障害などが見られるウェルニッケ脳症になることがあり、重篤な場合は死亡することもあるとされています。
つくしの食べ過ぎはアノイリナーゼを多く摂ることになってしまうので、十分な注意が必要となります。
アノイリナーゼを減らす方法は?
アノイリナーゼは熱で失活するので、加熱調理が勧められます。
また、ニンニクやネギ、ニラ、ラッキョウなどのニオイの強い食材に多く含まれるアリシンがビタミンB1と結合し、「アリチアミン」になることでアノイリナーゼの影響を受けづらくします。
つくしは毒が含まれているの?
つくしに副作用があることはわかりましたが、他にも体に害があるようなものが含まれているのでしょうか。
実はつくしにはアルカロイドが含まれています。
アルカロイドの多量摂取は吐き気や下痢などの消化器症状や幻覚、麻痺などの症状を引き起こすことがあります。
しかし、アルカロイドが一概に悪いかと言えばそういうわけではなく、鎮痛や麻酔の作用があり、医薬品として重要な役割を果たしています。
つくしに含まれているアルカロイドがどのくらいの量か確認はされていませんが微量であり、つくしによるアルカロイド中毒の報告も明らかにはなっていません。
一般的に言う普通の量程度であれば、つくしを食べてアルカロイド中毒の症状が出ることはありませんので安心して食べてください。
それでも毒が含まれていると言われれば不安になるものです。
そこで、汚れを落とすために水に浸けたり、流水洗いしたり、灰汁抜きなどの下処理をすることで毒も低減させることができるので下処理をしっかりしましょう。
つくしの下処理の仕方
つくしにはアノイリナーゼやアルカロイドが含まれていて、しっかりと下処理することがおすすめです。
〈つくしの下処理の仕方〉
① つくしの節についているハカマを全て取る(ハカマに切れ目を縦に入れて巻き取るように取ると簡単に取れる)
② ハカマを取ったつくしを大きめのボールに水を張ったその中に入れ、しばらく放置して汚れを落とす
③ ②を流水で泥やホコリなどの汚れを丁寧に取る
④ たっぷりの水に塩を入れ沸騰させ、つくしを入れて混ぜながら5分茹でる(アク抜き)
⑤ 水にさらしてから、ザルにあげる
大量に採ったつくしは下処理をして小分けにして冷凍保存をしておけば、一年は保存ができるので食べたいときに便利に使えます。
スギナの話
つくしが群生しているまわりにスギナも同じく群生しているのを見た事ありますよね。
実はスギナも食べることができるんです。
ただ、扱いはつくしと同じで、アノイリナーゼと微量のアルカロイドが含まれているので、気になる人は下処理を忘れずにやってから調理しましょう。
お浸しや天ぷら、和ハーブとしてお菓子に入れてもおいしく食べることができます。
また、スギナ茶というお茶で飲まれることもあります。
スギナ茶も飲み過ぎるとビタミンB1が欠乏してしまう恐れがあるので注意が必要ですが、利尿作用、血液の浄化作用、デトックス、自律神経の調整など優れた効果が期待できます。
つくしの食べ過ぎに関するまとめ
つくしには注意すべき成分「アノイリナーゼ」と植物毒である「アルカロイド」が含まれています。
アノイリナーゼは体の中のビタミンB1を減らし、エネルギー不足や疲れ、脳神経系に障害を与えるだけではなく、重症化すると脚気やウェルニッケ脳症になることもあるので注意が必要です。
アルカロイドがつくしに含まれていると言っても、実は微量です。
つくしを食べてアルカロイド中毒を起こしたということも聞いたことがないという人の方が多いかと思います。
しかし、気になる人は作用の失活や毒の低減のために下処理をおすすめします。
つくしは熱を加えた調理であればおいしく食べられます。
旬の春にはおいしく食べて下さいね。
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