小さな実がぶどうを思わせる海ぶどうの正式名称はクビレズタ(括れ蔦)で、沖縄や南西諸島で生産されている海藻です。
主に醤油や三杯酢、ドレッシングなどにつけて食べられていて、その食感はプチプチと特徴があるもので、癖になり食べ過ぎることも。
しかし、海ぶどうの食べ過ぎは胃痛になると言われています。
海藻ということで体に良いイメージがある分、胃痛が起こるとは驚きです。
栄養や効能も含めて、胃痛の原因が何かを探っていきましょう。
今回は『海ぶどうの食べ過ぎで胃痛?栄養や効能は?』をテーマに紹介します。
海ぶどうの食べ過ぎは胃痛になる?
結論から先に述べますと、海ぶどうの食べ過ぎは胃痛になることもあります。
胃痛を引き起こす原因としてあげられるのが食物繊維です。
食物繊維「フコイダン」の働き
海ぶどうには「フコイダン」という成分が含まれていて、今回紹介する胃痛の元と考えられているものです。
本来、フコイダンは体に良い成分で有名なもので、健康食品などにもなっています。
フコイダンの効能として注目されている効果は癌の予防や治療に役立っていることです。
その中でも低分子フコイダンと呼ばれるものの摂取では免疫細胞を活発化し、癌細胞を攻撃するのですが、初期の癌だけというわけではなく、進行性の転移・再発した癌にも改善が見られたという事例があります。
免疫細胞の活発化からアレルギー症状を緩和する作用もあり、体内の免疫システムの不調により現れるアトピー性皮膚炎や花粉症など不快に感じる症状を抑制してくれます。
更に胃癌の原因となるピロリ菌の除去(抗ピロリ菌)、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防(抗潰瘍作用)に役立ちます。
ピロリ菌を完全に防ぐことは難しいとされていますが、フコイダンはピロリ菌を吸着させ、排出も促すので、胃の健康が保たれると言われています。
胃痛はなぜ起きる?
これだけの効果がありながら、フコイダンの摂り過ぎは胃痛(腹痛)や下痢などの消化不良を引き起こすことがあります。
先程も述べましたが、フコイダンは食物繊維です。
海ぶどうなど食物繊維を含んだ食べ物は消化に時間がかかり、胃にとどまる時間が長くなることで負担がかかってしまい消化器官に不快な症状を起こしてしまいます。
胃痛以外に注意することはある?
海ぶどうに含まれる成分を見てみると「ヨウ素」と「ビタミンK」が多く含まれています。
これらの摂り過ぎは体に不調を招くことはないのでしょうか。
ヨウ素:甲状腺に影響
海ぶどうだけではなく他の海藻にも含まれていて、特に昆布に多く含まれている「ヨウ素(ヨード)」は摂り過ぎると甲状腺機能低下を引き起こしてしまいます。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの合成に必要となる主原料で、甲状腺ホルモンは新陳代謝を高める、胎児や乳児、子供の骨や脳を正常に発育させ、成長ホルモンと共に子供の成長を促進させる働きがあります。
日本人の食生活ではヨウ素の欠乏が起きることはほぼありませんが、問題視されているのは過剰摂取です。
先程も述べましたが、昆布は海藻類の中でも要素を多く含んでいて、毎日の食事で昆布を多く食べる(出汁としての昆布も含む)ことが過剰摂取となっていくのですが、更にそこへ海ぶどうを食べ過ぎてしまってもヨウ素の摂取量が増えてしまいます。
ヨウ素の過剰摂取は甲状腺ホルモンの分泌が低下し、甲状腺機能低下症となることがあります。
甲状腺ホルモンは新陳代謝との関わりがあるので甲状腺機能低下症となった場合、全身がエネルギーを利用できず様々な影響が出てきます。
その症状は強い倦怠感、皮膚の乾燥、発汗減少、便秘、視力の低下、仮性痴呆、うつ症状などを引き起こすことがあります。
妊娠中にもヨウ素の摂取には注意が必要です。
特に妊娠初期には気を付けたいもので、妊娠中に摂ったヨウ素が生まれてきた赤ちゃんの甲状腺に影響を及ぼすことがあります。
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)というもので、早期発見、投薬でホルモンの分泌が正常になるので、その後異常が続くというものではありません。
しかし、発見が遅れてしまうと知的障害や体の成長の遅れなどが見られることもあるようです。
ビタミンK:過剰症の報告なし
海ぶどうに多く含まれるビタミンKの働きは出血した時に止血する因子を活性化させる血液凝固作用、カルシウムを骨に沈着させ形成する働き、丈夫な骨を作る働き、動脈の石灰化を抑制する働きがあります。
海ぶどう100gあたりのビタミンKは35㎍含まれています。
ビタミンKの一日の摂取目安量は成人男女共に150㎍と設定がありますが、過剰摂取による体への影響はないとされているので、摂取上限量は設定されていません。
しかし、先に述べているようにフコイダンやヨウ素による体への影響があるので海ぶどうの食べ過ぎには注意が必要となります。
海ぶどうの栄養や効能は?
海ぶどうに含まれているフコイダン、ヨウ素、ビタミンKについては体への影響も併せて働きを説明してきましたが、これらの栄養素の他にはどのような栄養が含まれているのでしょう。
カウレルパラセモサエキス:女性に嬉しい肌への効果
カウレルパラセモサエキスという言葉は聞きなれない栄養成分で初めて耳にする人も多いかと思います。
海ぶどうに含まれるカウレルパラセモサエキスは紫外線や老化などで弱った肌の新陳代謝をアップし、ターンオーバーを促進し肌を健康な状態に近づけます。
また、この成分は関節軟骨を形成するデコリンの主成分となっていますが、コラーゲンの繊維を結合・回復させる働きがあり、肌にハリ、弾力を保つ効果が高く、若々しい肌作りへと導きます。
カルシウム、マグネシウム:骨の形成に不可欠
海ぶどうにはカルシウム、マグネシウムといったミネラルも含まれていて、骨や歯の形成には大切な栄養素です。
カルシウムもマグネシウムも多くは骨や歯に含まれていて、体内で不足が生じると遊離して血液などの不足部分を補う、神経の興奮を抑制、エネルギー産出の補助、血圧の維持など双方が拮抗しながら重要な役割を担っています。
不足は筋肉の痙攣や全身の痙攣(テタニーやてんかん)を起こすこともあり、長期のマグネシウム不足にいたっては生活習慣病のリスクを高める可能性があるとも言われています。
鉄分:血液を作る重要な栄養
海ぶどうには鉄分も含まれています。
体内の鉄分70%程が赤血球を作るヘモグロビンの材料となります。
ヘモグロビンは呼吸から体内に入った酸素と結合して体のいたるところまで運ぶという大切な役割を担っています。
鉄分の不足は血液の材料となるものが体内から減少するので、鉄欠乏性貧血を起こすこともあり、頭痛、疲労、動悸などの症状が見られます。
女性には月経、妊娠や出産があるので特にこれらの時期には意識した食生活が重要となります。
海ぶどうに含まれる鉄分は「非ヘム鉄」と言い、肉や魚などの動物性食品に含まれるヘム鉄とは違い、体に吸収されづらい性質です。
非ヘム鉄を摂取する時は、ビタミンC、動物性タンパク質をプラスすることで、吸収率をアップすることができます。
海ぶどうの食べ過ぎに関するまとめ
海ぶどうは本来、胃への良い効果があると言われていますが、食べ過ぎは海ぶどうに含まれている食物繊維「フコイダン」が長く胃にとどまることが原因で、胃痛など消化器官に影響を与えてしまいます。
更に海ぶどう豊富に含まれるヨウ素が原因で甲状腺機能低下症を引き起こすこともあり、妊娠中の摂取も生まれてくる赤ちゃんの甲状腺に影響を及ぼすことがあるのでヨウ素の摂り過ぎには十分な注意が必要となります。
しかし、食べ過ぎなければ栄養成分は優れています。
フコイダン、ヨウ素、ビタミンK、カウレルパラセモサエキス、カルシウム、マグネシウム、鉄分などの栄養が含まれていて、効果は癌の予防・改善、アレルギーの改善、抗ピロリ菌作用、抗潰瘍作用、子供の骨や脳の正常な成長、血液凝固作用、丈夫な骨作り、新陳代謝アップ、美しい肌作り、貧血の予防など多くを得ることができます。
食感が癖になる人も多いかと思いますが、食べ過ぎには十分注意をして食事に取り入れていきましょう。
コメントを残す