牡丹鍋の主役、イノシシ肉は見かけることが少ないですが、赤ワイン煮、カレー、カツなどおいしく食べられる料理が他にもあります。
好きな人には尾を引く味ですがクセがあるというイメージも強く、食べたことがない人は手を出しづらいところでもあります。
血抜きなどの下処理をしっかり行えばおいしく食べられますが、食べ過ぎには注意が必要となり、寄生虫の心配があると言われているのです。
食べる時には安全に食べたいので真相をしっかり明らかにしておきましょう。
今回は『牡丹鍋に使われるイノシシ肉の食べ過ぎは大丈夫?寄生虫の心配はないの?』をテーマに紹介します。
イノシシ肉の食べ過ぎは大丈夫?
イノシシ肉は身近な肉ではない分、食べ過ぎて起こることも知られてはいません。
安心して食べられるように食べ過ぎても大丈夫かということを知っておきましょう。
食べ過ぎても太らない?
食べ過ぎの気になることと言えば、やっぱり太るか太らないかということではないですか?
イノシシ肉のカロリーは100gあたり268kcalです。
これだけを見れば高いような気がしますが、牛肉と豚肉のカロリーを見て見ましょう。
牛肉は100gあたり371kcal、豚肉は100gあたり386kcalで、イノシシ肉と比べると100kcal以上も高くなっています。
実際に見た事がある人にはわかるかと思いますが、イノシシ肉は一見脂身を占める部分が多くカロリーが高そうな感じがするのですが、脂質は19.8gで牛肉の32.9g、豚肉の34.6gと低く、肉の中ではヘルシーな肉となっています。(猪、牛、豚共に100gあたりの数字)
これはイノシシが自然を走り回り、体に余分な脂がついていないことにあるようです。
寄生虫の心配は?
冒頭でも触れましたが、イノシシ肉には実際に寄生虫による食中毒を引き起こすリスクがあります。
イノシシ肉は「ジビエ」の一種ですが、シカ、野ウサギ、クマなどもジビエと呼ばれていいます。
ジビエとは狩猟で捕獲された食材としての野生鳥獣の肉を意味したフランス語です。
イノシシ肉だけではなくジビエと呼ばれる他の野生鳥獣の肉には寄生虫が高い確率で寄生しています。
その病原体は住肉胞子虫(ジュウニクホウシチュウ)、肺吸虫(ハイキュウチュウ)、トキソプラズマ、トリヒナなどです。
寄生虫による食中毒の症状は?
イノシシ肉には寄生虫の心配があることがわかりましたが、適切な下処理がされないまま食べ過ぎてしまうなんてこともあるかもしれません。
寄生虫による食中毒の症状はどのようなものなのでしょう。
イノシシやウシの筋肉に胞子虫は寄生し、人間に寄生することはありません。
しかし、その肉を加熱不十分な状態で食べると感染し、住肉胞子虫症を発症します。
その症状は摂取後3~6時間ほどで下痢や腹痛、嘔吐などの消化器症状が見られ、一日ほど継続します。
住肉胞子虫は適切な凍結処理で感染力はなくなります。
肺吸虫は基本的には淡水で生息するカニに寄生する蠕虫ですが、イノシシやシカなどにも寄生します。
アジアやラテンアメリカ、アフリカなどで確認されていて、日本での症例の原因となる肺吸虫は宮崎肺吸虫とウェステルマン肺吸虫の二種類です。
共に感染することで呼吸器症状が見られ、胸腔や灰を移行しさまざまな症状を引き起こします。
その症状は肺癌や肺結核の症状と似ているとも言われています。
また、神経系(脳)への侵入で頭痛、嘔吐、てんかん発作、視力障害など重篤な症状が現れ死亡することもあります。
トキソプラズマの感染はイノシシやヒツジなど加熱不十分な肉を食べることが原因です。
感染しても症状は軽い頭痛、発熱や無症状など軽度の症状の場合が大半だとされていますが、体力が落ちている場合や体が弱っている時には重篤な症状が見られることもあるので注意が必要となります。
また、妊娠中にトキソプラズマに初めて感染してしまうと胎盤感染が原因で流産、死産、早産、胎児に感染してしまうと水頭症、発育不全、精神遅滞などの先天性トキソプラズマ症が起こることがあります。
トリヒナ感染の主な原因となるのがジビエの生食です。
感染した肉を食べるとトリヒナの幼虫は脱嚢し、消化管粘膜に侵入、成虫になり幼虫を産みます。
この時期を消化管侵襲期と呼び、症状は悪心、腹痛、下痢などが見られます。
その後幼虫筋肉移行期を迎え、幼虫は体内を移行し筋肉へと運ばれます。
この時期は感染後2~6週間の間を指し、眼窩周囲(がんかしゅうい:眼球の収まる頭蓋骨のくぼみ)の浮腫が見られ、他にも発熱、筋肉痛、皮疹、好酸球の増加が見られ、好酸球数の増加によりあらゆる臓器が損傷します。
次に幼虫被嚢着を迎え、感染後6週間以降に幼虫が体のいたるところの横紋筋で被嚢(暑い膜を被って一時的に休眠状態になること)し、軽症であれば回復に向かいますが、重症の場合は貧血、全身浮腫、心不全、肺炎などを併発し、死亡にいたることもあります。
寄生虫は冷凍処理も有効とされていますが、トリヒナは冷凍に強く冷凍処理をしても死滅することはありません。
寄生虫による食中毒の予防法は?
寄生虫による食中毒の症状は感染したイノシシ肉の生食や十分な加熱が行われないことによって起きてしまいます。
食中毒を予防するために、加熱する場合はとにかく「中心までよく火を通す」ことで、寄生虫は死滅します。
冷凍処理もありますが、寄生虫により死滅する温度と時間が異なるため、自分で処理をする場合には加熱処理で「中心までよく火を通す」ことを行ってください。
肉の加熱だけではなく、調理の前と後、食事の前にはしっかり手を洗う、調理後には調理器具と食器の洗浄と消毒が周りへの感染も防ぐこととなるのでしっかり行いましょう。
寄生虫以外の病原体にも注意が必要
イノシシ肉を食べて起こる食中毒には寄生虫以外の病原体もあります。
その病原体は腸管出血性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター、E型肝炎ウイルスなどがあげられます。
症状は菌やウイルスによって異なりますが、腹痛、下痢、嘔吐、血便、脳症、溶血性尿毒症症候群、ギランバレー症候群などの症状が現れます。
これらの病原体も熱に弱いので十分な加熱処理が有効となります。
イノシシ肉の食べ過ぎに関するまとめ
イノシシ肉は食べ過ぎても牛肉や豚肉と比べてカロリーが低く、太りづらいダイエット向けの肉です。
と言って凄く食べ過ぎてしまっては摂取カロリーが多くなってしまうので注意が必要ですが・・。
イノシシ肉は栄養も多く含んでいて高タンパク、不飽和脂肪酸、ビタミンB群、ミネラルなどを多く含んでいるので代謝アップや生活習慣病の予防にも役立ちます。
しかし、注意すべきことは生食や十分な加熱処理がされていない肉です。
イノシシ肉を含むジビエには住肉胞子虫、肺吸虫、トキソプラズマ、トリヒナなどが寄生するだけではなく、腸管出血性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター、E型肝炎ウイルスなど寄生虫以外の病原体が存在していることもあります。
これらの寄生虫や病原体は体のいたるところに影響を及ぼし、最悪の場合には死亡することもあるので十分な注意が必要です。
これからイノシシ肉を食べる予定がある人はとにかく「中までよく火を通す」こと、これを必ず守って食べてくださいね。
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